まごころ   Sincerity

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成瀬巳喜男  1939年  67分
少女二人を通して、大人のいびつで、時には醜悪な意識対立を浮かび上がらせた傑作。娘の成績が芳しくなかったことをきっかけに母親(村瀬幸子)が成績のよい娘、そして教師が「育て方がよい」と褒めるその娘の母親(入江たか子)に嫉妬する。さらにその母親が、夫のかつての愛人(それが愛人であるか、それとも遠縁の知り合いであったのかは解釈が分かれるところ。原作を読まぬ私には解らない。)であることを知り、嫉妬はさらに炎上。子供たちの善意の関係と母親の抱く悪意のコントラストが、うまく機能している。善意の象徴であるフランス人形が、戦中の格差社会の両極にある二つの家庭の間を行き来することで、大人の社会性の裏に潜む悪意と情念が浮かび上がってくると言う、よくできた構成である。登場回数が少ないが、実は成瀬が真に描きたかったのは、あの良家の少女の母(村瀬幸子)のねたみと社会の相克ではないか。
しかし、物語以上に二人の少女の遊戯的関係がきわめて無声映画的な演出で処理されており、瑞々しい表情や、悲劇の到来により二人が校庭で泣いてしまうシーンでさえ、端麗なアクションに収束させているところは圧巻である。最後とってつけたように、少女の父の出征シーンで映画は終幕するが、プロパガンダとしてよりも、それが心理的な平和を取り戻した二人の女性と少女たちを描くシーンとして「のみ」機能している完璧さに最も感動した。
“Sincerity” Naruse Mikio  1939, 67 minutes
Naruse’s masterpiece portrays human psychology of jealousy and envy by contrasting with two elementary school girls from two opposite social levels. The mother of the girl, Sachiko Murase, feels put down when she found her daughter’s friend is doing much better in school although she’s from poor family with a single mother(Takako Irie). And she finds out the single mother is the former mistress of her husband, then her jealousy grows even rapidly. A French doll, which Murase’s husband offered as gift to Irie’s daughter for her help, makes the turmoil even worse and complex. Goodwill of the two girls actually opens up Pandora’s box – the old wounds of adults’ affair, that makes the family relationship pretty messy.
Naruse’s handling of child-adult contrast is beautifully crafted.
As good as the well-made story line, I was quite impressed by the girls play scenes which were depicted in silent actions. Even their tragic fight and conflict are translated as cinematic (=silent) signs and compositions, almost like Griffith.

Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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