実在したセクシャル・ハラスメント事件に基づき、
その後日談として創作されたフィクション
本作は、実在したセクシャル・ハラスメント事件に基づき、その後日談として創作されたフィクションである。監督はベルリン国際映画祭でワールドプレミアされた『フタバから遠く離れて』等、ドキュメンタリー映画も制作している映画作家の舩橋淳。リサーチしていくなかで、密室で起こったハラスメント事件の当事者が、セクハラそのものの辛さに加え、その後、職場組織の中で、どう生きてゆくのか、周囲との関係が本当に辛いと言う声を聞いたのが制作の始まりだった。当初はドキュメンタリー映画として映画化を考えたが、実在の人間を映すと、個人名や職場を特定される恐れもあり制作は困難と判断。改めてフィクションとして再構成することになった。
それぞれの善意、思惑、そして悪意―
ある職場の風景から見えてくる日本社会の歪み
シナリオは無く舞台設定だけ与えられた俳優たちが、即興に近い演技で演じているのも本作の見どころのひとつだ。言いよどみや、リアルな会話のぎこちなさは、まるで観ているものが実際にその場に立ち会っているような感覚を与える。
それぞれの善意、思惑、そして悪意。日本社会に蔓延する同調圧力の空気は、いつしか無意識の悪意のかたまりとなり、二次加害、三次加害と更に増幅していき被害者を益々孤立させていく。それはどこにでもある「ある職場」の風景なのかもしれない。
わたしたちはどのように、その加害と向き合えばよいのか? ジェンダーギャップ、ハラスメント問題が日常的に取り沙汰される昨今。本作は、今後の日本社会への大いなる警鐘と言えるだろう。