『過去負う者』(英題「The Burden of the Past」)2023年/125分/カラー/16:9/DCP/PG12
撮影・録音・脚本・編集・監督: 舩橋淳 プロデューサー: 舩橋淳、植山英美
出演:辻井拓、久保寺淳、田口善央、紀那きりこ、峰あんり、満園雄太、みやたに、伊藤恵、小林なるみ、平井早紀
後援:法務省 配給・宣伝:株式会社BIG RIVER FILMS ワールドセールス:ARTicle Films

ニュース


    イントロダクション

    日本の刑務所満期出所者が5年以内に再犯し、再び入所する確率は約50%。「世界一安全な国」を標榜しながら、一体、なぜ出所者は再び罪を犯してしまうのか?背景には、再入所者の7割が無職だったという事実が示すように、元受刑者は「就労」がしづらいという大きな問題が横たわる。単にお金を稼ぎ、安定した住居を得るというだけでなく、他人から認められる意味でも社会復帰に重要とされている就労の問題は、数多ある映画の中でも、これまで大きく取り上げられることはなかった。

    本作は、受刑者の採用を支援している実在の就職情報誌の活動にヒントを得て制作された劇映画である。監督は劇映画からドキュメンタリーまで幅広く手がける舩橋淳。実際のセクハラ事件に基づいて役者との即興劇で描いた前作『ある職場』(2022)と同様、自らプロデューサーも務め、前作とほぼ同じキャスト・スタッフで、前科者の社会復帰に横たわる問題を描いた。その先に見据えるのは、社会の不寛容が新たな犯罪を生んでしまう悪循環を変えたいという想い。あえて台本は用意せず、現場で俳優と演技を煮詰めてゆく「ドキュメンタリーXドラマ」の演出手法は、観るものに震えるようなリアリティをもたらすだろう。


    ストーリー

    受刑者向けの就職情報誌「CHANGE」編集チームは、出所者の就職あっせんと更生支援をしていた。

    チームのひとり藤村(35)は、ひき逃げによる殺人罪で10年服役した田中(34)を担当し、中華料理屋に就職させたもののキレやすい性格でトラブル続き。女子児童へのわいせつ行為により2年服役した元教師・三隅(37)は、職に就いたとたんすぐ消息を絶ち、チームを落胆させる。薬物常習で2年服役後出所した森(30)は清掃会社で働くものの、長年続くコミュニケーション障害でなかなか社会にフィットできない。

    社会復帰に向けてもがき苦しむ元受刑者を目の当たりにした藤村らは、アメリカの演劇による心理療法・ドラマセラピーを提案。元受刑者たちと稽古を重ね、舞台『ツミビト』を公演するまでに至るのだが…。舞台初日の観客の反応は、彼らにとって全くの予想外だった。

    スタッフ

    舩橋 淳
    映画監督・プロデューサー

    舩橋 淳(ふなはし・あつし)

    東京大学卒業後、ニューヨークで映画制作を学ぶ。第一作『echoes』(2001)がアノネー国際映画祭で審査員特別賞・観客賞。第二作『Big River』(2006、主演オダギリジョー)はベルリン国際映画祭、釜山国際映画祭等でプレミア上映された。2005年アルツハイマー病に関するドキュメンタリーで米テリー賞を受賞。2012年福島原発事故を描いた「フタバから遠く離れて」は、ベルリン国際映画祭でワールドプレミア、音楽を担当した坂本龍一とともに登壇。世界に向けフクシマの窮状を訴え、その後世界40カ国以上で公開された。2012年度キネマ旬報文化映画第7位。同スピンオフ作品「放射能 Radioactive」は仏Signes de Nuit国際映画祭でエドワード・スノーデン賞を受賞。2013年メロドラマ『桜並木の満開の下に』(主演:臼田あさ美、三浦貴大)はベルリン国際映画祭へ5作連続招待の快挙。日米葡合作「ポルトの恋人たち 時の記憶」(2018)では、主演柄本佑がキネマ旬報最優秀男優賞。日本のジェンダー不平等を問いかける最新作「ある職場」は東京国際映画祭2020に選ばれ、全国で公開中。著書は、「まだ見ぬ映画言語に向けて」(吉田喜重監督との共著、作品社)「フタバから遠く離れて」「フタバから遠く離れて 第二部」(ともに岩波書店)など。映画業界の構造改革を訴えかける運動action4cinema(代表:是枝裕和、諏訪敦彦)のメンバーとしても活躍中。

    HP:www.atsushifunahashi.com

    Director’s Statement

    2020年のこと、ある縁でかつて殺人の罪を犯した出所者の男性とお話しをする機会がありました。
    3時間ほどゆっくり時間をかけ、その方の人生のお話を聞きました。
    人を殺めるに至った経緯とその後の刑務所での暮らし、出所後の第二の人生について、いま抱いている罪への後悔と反省の念について伺いました。その男性には、過剰とも思える気遣い、ナーバスになりすぎる神経的傾向があり、その心配性の性質(たち)のせいでかーっとなってしまった状況、その時の感情のあり方、心の内が手に取るように伝わってきました。
    その話を聞きながら僕が感じたのは、自分も同じような状況に陥ったのならどうなるかわからない、もしかしたら自分も一線超えてしまいかねない、という気持ちでした。
    犯罪を犯した人を、やってはならないことをやった人として僕らは線を引いて差別しがちですが、男性の辿った経緯を聞いていくと、そこには生身の人間の葛藤がありました。自分となんら変わらない、一歩間違えば、自分もそちらになってしまうだろうと思える<地続きの感覚>でした。

    人は、迷い続け、揺れ続ける不確かな存在です。
    出会う人や生きる環境によって影響を受け、変化しつづける。僕自身も、些細なことに心を動かされ、迷いながら日々生きています。

    だからこそ、自分となんら変わらない人が犯罪を犯してしまったとき、彼らを刑務所に放り込んで、痛い目に合わせて、出所後も日陰で暮らせばいい、としている社会は、本当にそれでよいのだろうか、と躊躇いを感じています。

    社会的に決して赦されない犯罪を犯した人間は、罪を償うための刑は受けるべきでしょう。
    その刑を受けた後は、どうなるのでしょうか?

    出所者の人生は、そこから続いていきます。
    実際、その男性もいくつかの仕事を転々としつつ、いまは建設関係の仕事に就いていました。
    「元殺人者としての社会の厳しい眼差しは常に感じるし、自分は一生それを背負ってゆくのだろう」と言ってました。

    彼のように一度罪を犯した人は、もう「社会的に赦される」ことはありえず、一生日陰で生きてゆかなければいけないのでしょうか。実際、更生のきっかけを得られず社会の隅に追いやられ、再犯を犯してしまう出所者は少なくありません。

    日本の刑務所満期出所者が5年以内に再犯し、入所する確率は約50%。「世界一安全な国」を標榜しながら、一体、なぜ出所者は再び罪を犯してしまうのか?

    その大きな原因の一つに、「過ちを犯した人に非常に厳しい日本社会」の側面が大きくあると僕は感じています。

    ネット空間での誹謗中傷が無秩序に広がっていっている中、「自業自得」とか、「自己責任社会」という言葉があちこちで飛び交い、どんどん生きにくい社会になっているという感覚はないでしょうか。過去の過ちがネットで暴かれ、徹底的に叩かれ、カムバックできないほど社会的制裁をうける人が多くみられます。キャンセルカルチャーが加速的に世界で進んでいます。

    不確かで変わりやすい存在である人間は、更生する可能性も大きく秘めているはずです。
    その変化の可能性(可塑性といいます)をもう少し信じてあげられる社会になった方がいいのではないか。

    「過去にやらかした人はアウト」と差別する自己責任社会に必要なのは、この人間の不確かさへの包容力だと考えています。

    そんなことを考えていたとき、心打たれる活動に出会いました。
    受刑者の採用を支援する就職情報誌「Chance!!」(株式会社ヒューマン・コメディ発行)です。諸外国では国や官庁が行なっていることを、日本では民間でやっている。社会の受け皿を広くするための素晴らしい活動だと思いました。いろいろ取材させて頂き、それが強烈なインスピレーションとなりました。

    <過ちを犯してしまった人>の迷いと揺れ、犯罪に対する心の底からの後悔を描き、
    見ている人に我が事として、「自分が/自分の親しい人が、罪を犯してしまったら・・・?」という
    <地続きの感覚>を共感してもらう。

    そして、より包容力のある社会の大切さを心に感じてもらえるような映画を作りました。

    それが「過去負う者」です。

    いまの社会で、多くの人に見ていただく意味のある映画だと感じております。

    スタッフ

    • アソシエイト・プロデューサー

      みやたにたかし

      2018年にビジネスマンのまま小劇場系の劇団見習い。2019年映画『his』(今泉力哉監督)を皮切りに多数の映像作品に参加。現代アートも手がける自称artist。現役弁護士。2023年から駆け出し映画監督。 「『出所者は、支えてあげたいけど、うちの隣には来ないで』と感じる方、これはあなたの映画です。」
    • アソシエイト・プロデューサー

      久保寺淳

      この作品を劇場で観てもらいたい、ひとりでも多くの観客にしっかり届けたいという思いで、主演でありながらアソシエイト・プロデューサーとしても奮闘中。 「舩橋監督の情熱と使命感に、俳優たちが全力で応えた映画です。元受刑者の社会復帰にまつわる物語ですが、不器用な登場人物たちの試行錯誤を通じて「人」と「人」がどう関わるのか見ていただけたら幸いです。」
    • サウンドデザイン

      伊藤建介

      リレコーディングミキサー、サウンドデザイナー、コンポーザーとして、映画作品を中心に映像のサウンドを手掛ける。また、プライベートスタジオの1175 Boylston St.では、ADR、VOの録音も行なっている。英語を使用した海外案件も複数取り扱い、グローバルに活動中。
    • 音響効果

      牛島正人

      株式会社ソノロジックデザイン代表取締役兼サウンドデザイナー。ゲーム業界を中心にサウンドデザイン/ディレクション/仕様作成も含めた統合的なオーディオプロダクションサービス提供を行う。

    キャスト

    • 辻井拓

      辻井拓

      田中拓役 /
      自転車の高校生をひき逃げ。殺人罪・道路交通法違反。実刑10年
      1981年生まれ。大阪出身。劇団青年座研究所33期卒業。大学卒業しフラフラしていた頃ドラマ「お金がない!」を見て、芝居というのはこんなに人を楽しませられるんだと感動。役者を志す。ジールアビリティ所属。
      ●2009讃岐映画祭グランプリ受賞作品 橋本愛主演『Give and Go』マネージャー役 ●「野火」兵隊役 塚本晋也監督 ●自主映画「蜃気楼」鈴木役(制作:遊映舎)●『一瞬の楽園』コンビニ店員役 小澤雅人監督 ●中国映画「唐人街探偵 東京MISSION」黒龍会組員、警官役 ●『ある職場』城戸拓役 舩橋淳監督 等
      「前作『ある職場』と同じ台本のない撮影の中、過去にひき逃げをしてしまった人間を役作りの難しさに迷いながらも精一杯演じました。」
    • 久保寺淳

      久保寺淳

      藤村淳役 /
      CHANGE 編集部・保護司
      米国と台湾での俳優修業を経て海外の映画やドラマにも多数出演するトライリンガル女優。
      2018年ヒロインを演じた李榮浩MV『年少有為』は中華圏で大ヒット。2023年本作品『過去負う者』と『ふたりごっこ』(冨樫森監督)の2本で悲願の主演を果たす。
    • 田口善央

      田口善央

      三隅善央役 /
      女子児童へのわいせつ行為。準強制わいせつ罪 実刑2年 元教員
      咲プロダクション所属俳優。特技は殺陣と居合抜刀道初段。映像作品や舞台、殺陣でのイベント出演など幅広く活動している。
      「一寸先は闇。魔がさせば人は誰でも一線を越えてしまう危うさがあると、演じていく内に感じるようになりました。」
    • 紀那きりこ

      紀那きりこ

      森文(あや)役 /
      覚せい剤の所持・使用 覚せい剤取締法違反 実刑2年
      高校まで愛知で過ごし、俳優になろうと決めて大学で上京し、自主映画サークルに入ったことがきっかけで活動を始める。主演した映画「退屈なかもめたち」(鈴木秀幸監督)が昨年、シネマロサ、横浜シネマリンで公開。ワークショップで体験した舩橋監督の映画作りに惹かれ、今作に参加した。
      「舩橋監督と共演者の皆さんと、絞り出すように撮影した日々でした。何が正しくて、何が間違っていて、どうしたら償えて、どうしたらゆるせるのか。あの時本当はどうしたらよかったのか、これからどうしていけばいいのか、わたし自身これからもずっと考え続けて行きたいです。」
    • 峰あんり

      峰あんり

      島あんり役 /
      知人男性宅に放火 現住建造物等放火罪 実刑10年
      フリー。地元長野のミュージカルで初舞台後、拠点を東京に移し映画ドラマ舞台に多数出演。「ある職場」より舩橋監督作品に参加。モデル湖森彩八夏の名前でデジタル写真集、YouTubeでも活動中。今秋にはYouTubeドラマ「portrait(s)」(村上祐介監督)に出演。
      「その役に寄り添って、一緒に生きることを意識して演じました。想いが届きますように。」
    • 満園雄太

      満園雄太

      若尾雄太役 /
      店長 知人男性を脅し暴行 恐喝および殺人未遂罪 実刑3年
      (株)タイムフライズ所属。東京都出身。主に時代劇の商業舞台出演。
      近年は映画・ドラマにフィールドを移す。舩橋監督作『ある職場』に引き続き、今作出演。
      「内容は自分自身には遠いようで、身近な作品だと感じました。それは演じながら、映像を見ながら皆様には作品を観て頂いて、考えて頂ければと思います。」
    • みやたに

      みやたに

      永田隆役 /
      CHANGE 編集部・編集長
      2018年にビジネスマンのまま劇団SHOW&GO FESTIVAL見習い。2019年に映画『his』(今泉力哉監督)で映像作品に。以来多数のインディーズ作品に。最近では澤佳一郎『アリスの住人』、保谷聖耀『宇宙人の画家』、園田新『消せない記憶』等でメインキャスト。森義隆『両刃の斧』(WOWOWドラマ)にも出演。
      2023年秋には本作品のほか、福嶋賢治『フライガール』(9/22~シモキタ - エキマエ - シネマ K2)、福岡佐和子・はまださつき『まだ君を知らない』(10/7~新宿K'sシネマ)、霧生笙吾『Journey』(10/21~池袋シネマロサ)が相次いで劇場公開!
    • 伊藤恵

      伊藤恵

      長谷川恵役 /
      CHANGE 編集部・心理士
      北海道小樽市出身。高校生から演劇に携わり、北海道で舞台、ドラマ、CM、ラジオパーソナリティなどマルチに活動。一旦役者から退いたものの、上京後、映画「スクラップスクラッパー」(16/加瀬聡監督)で役者を再開し、映画、ドラマ、ナレーションなどで活動中。2021年からハワイAlohaの精神に魅了されフラの表現を学び特訓中。心で感じたものをカラダで表現し物語を語ることを目標としている。舩橋監督前作「ある職場」では、セクハラ被害者を守る先輩「木下さん」を演じた。
    • 小林なるみ

      小林なるみ

      被害者・優くんの母
      株式会社タイムフライズ 所属。舞台では新国立劇場芸術監督でもあった宮田 慶子氏、 THE ガジラの鐘下辰男氏など 北海道内外問わず様々な演出家の作品に出演 ラジオパーソナリティ、CMナレーション、ドラマ出演の他。企画CD「雁月泡雪」ではラジオDJと歌を担当。
      ギターと朗読のコラボユニット”あわい”を結成。映画出演作品「TOCKA タスカー」「モルエラニの霧の中」「そこのみにて光輝く」「きみはいい子」他。
      2023年10月28日〜新宿K’s cinemaにて「海鳴りがきこえる」上映決定
    • 市川早紀

      平井早紀

      CHANGE 編集部・保護司
      1993年生まれ、大阪府出身。映画『飢えたライオン』(18/緒方貴臣監督)でデビュー。また、自身のYouTubeチャンネルにてほぼ毎日配信行う配信者としての一面も併せ持つ。『ミスiD2018』ファイナリスト。主な出演作に、映画『往訪』(22/宇賀那健一監督)、『ある職場』(主演/20/舩橋淳監督)、舞台『在りし日、学舎』(23/港谷順演出)。「本作で取り上げる問題に、私はまだ答えを持っていません。ただ、向き合い続ける方々へ心からの敬意を表します。」

    コメント

    敬称略/順不同
    • 胃が痛くなる。全員の言葉があまりにリアルで、虚構と現実が逆流する感覚に襲われる。
      テーマは重い。だからこそこの手法が功を奏している。稀有な映画体験と言っていいと思う。

      森達也
      (映画監督、作家)

    • 「罪を犯した人を社会はどのように受け入れるのか」映画はやり直しを許さない不寛容な社会に、この問いを突きつける。犯罪者の更生、被害者の心情、社会の偏見と疎外…答えの出ない重いテーマが折り重なり、これに向き合わされるうちに、「では、私たちは新たな被害者を生まないためにどうすべきか」を考え始める。それぞれの答えの幅を広げる、真摯な映画である。

      名執雅子
      (元法務省矯正局長)

    • 通常「劇中劇」と言えば、フィクションの中の彩りだったり、補強だったりするのだけど、それが虚実の皮膜を無化する破壊装置となっていて、そこから真実が浮かび上がってくる構造になっていた。すごい作品だ。

      金平茂紀
      (ジャーナリスト)

    • 『過去負う者』を観たあと、とても穏やかな気持ちではいられない。それは私だけではないだろう。だから、鑑賞後には誰かとこの映画について語り合う必要がある。

      高橋シズヱ
      (地下鉄サリン事件被害者・遺族)

    • 熱は冷める。だから保護司や更生の支援は、淡々と、でも死ぬまで付き合うんだという覚悟でやるしかない。映画の人物たちの佇まい、言い淀みから、それぞれが背負った複雑な過去がよく感じられた。人をじっくり見たくなる映画だ。

      香川まさひと
      (漫画・ドラマ「前科者」原作者)

    • 私たち人間は常に不完全な存在です。
      不完全で曖昧な私たちは、曖昧さの中にとりあえず線を引いて生きている。
      社会を騙し騙し成り立たせるために。
      そんな人間の矛盾が噴出していました。
      俳優の地力を引き出す舩橋監督の総合力が結実した作品でした。

      深田晃司
      (映画監督)

    • 事件の加害者や加害者の家族に話を聞く機会を大切にしてきた。
      なぜ事件を起こしたのか、責任を問うたり、検証するためではない。
      私も加害者になる未来があるかもしれないからだ。
      「今目の前にいるあなたは、私だ」 そう思いながらカメラを向けてきた。
      私は学びたかった。
      一線を超え、あちら側に行ってしまった人を、世間は時にまるでモンスターのように扱いがちである。 そうではないはずだ。
      加害者たちの言葉に耳を傾けていると私には特別な相手には思えなかった。
      ついその瞬間まで、私と同じ日常があり、社会があったのだ。
      どこで間違えてしまったのか。
      聞けば聞くほど、境界線を越えるその瞬間はわたしの次の一歩に近いところに用意されていると思えた。
      「なぜ加害者に寄り添うのか、被害者の気持ちを考えないのか!」
      視聴者の方からそう詰められたこともある。
      でも本当に問題解決に向け、少しでもコマを前進させるためには、加害を自分の遠いところにおいてはいけない。私はそう思っている。
      舩橋監督のこの映画は、私に一つの解を導いてくれた。
      手法も言葉も、どれも剥き出しであり痛みがあった。
      そして想う。 その痛みは私たちの生きる社会にとって、本当に必要なものなのか?と。
      引っ掻き傷のうちに、この痛みは多くの人達が共有すべきだと思う。
      だからこの映画が必要なのだ。 応援したい。そして、広げていきたい。

      堀潤
      (ジャーナリスト)

    • 犯罪(者)からの更生にはレジリエンス(しなやかな回復力)が欠かせない。映画の中で「犯罪は社会が作るもの」とあるが、だからこそ更生支援を充実させ社会の中で回復することが求められる。他方、自らが犯した罪により社会復帰を阻まれ、「自業自得」という言葉が受刑者に突き刺さる。そこにあるのは、「犯罪者」というラベリング(レッテルを貼ること)。レジリエンスとラベリング、この二つをどうクリアできるのかが課題である。

      出口保行
      (犯罪心理学者)

    クラウドファンディングに
    ご協力頂いた皆様

    クラウドファンディングへのご支援 
    誠にありがとうございました。
    敬称略/順不同
    • 大澤 学
    • 亀井 友明
    • 増田 信示
    • 沖山幸恵
    • 堀潤之
    • 土生田晃
    • 堀潤
    • 坂本きぬこ
    • (株)生き直し千葉龍一
    • 須藤千秋
    • まつなが よしたか
    • 浅倉いづみ
    • Akinori Sawai
    • 岩成葉夢
    • 斉藤 レイ
    • 伊原雅美
    • 阿部知代
    • 大&芙美
    • 常石史子
    • NICK UEMURA
    • 山口広規
    • 小原美由紀
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    • 根本真紀
    • 松村 厚
    • ヲ山敬子
    • 牧瀬茜
    • 엄신현UM SHIN HYUNオム シンヒョン
    • 西川直子
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