1941年 81 min
昔「この空は君のもの」を見て以来、恥ずかしながら殆ど見ていないグレミヨンの1941年の作品。ふたつの船の間を行ったり来たりすることで、人物の揺れる心と関係の状態を一挙に描いてしまうという仕掛け(=mise en scene)が素晴らしい。あと嵐で揺れる船の内装、模型による撮影など、美術が完璧。ほとんど全篇が土砂降りの嵐で、その中で労働する男達の肉体のリアリズム、特に曳き綱を巻き付けたり、発射、巻き取りなどの描写が強烈。船長ギャバンが女としけ込んだ海岸線の宿すら、船員は分かっているという、手狭なコミュニティ感もいい。町の人間はそれぞれ皆がどこにいるのか、という村社会に、犬の遠吠えのような悲しいサイレンが響く。吉田喜重の「嵐を呼ぶ十八人」を思い出した。