1943 90 min
Geneviéve Guirty, Sacha Guitry, Mona Goya
ドイツ占領下のフランスで撮られたことを記憶せらるべき作品。
夜中、家路に急ぐギトリとその若い恋人(実際のギトリの妻)が、足下を懐中電灯で照らしながら、真っ暗の街路を歩くシーンは忘れがたい。若い女性を展覧会でみとめ、すぐさま声を掛け、彫刻のモデルとしてリクルートし、「芸術に関する対話」と言いながら男女が互いの距離を縮めてゆく辺りの演出は堂に入っているし、盲目の人間のための心理療法士の老婆との対話シーンは面白い。あのような発想はさすが劇作家ギトリだと思ったものだが、しかし、監督ギトリ自身が、若い恋人を思うばかりに、視力を失いつつある老齢の自身から、女の気を背けるように浮気するという展開は平凡であると言わなければならない。ルビッチであればさらにもう一ひねりがあったに違いない。実際、最も心を動かされたのは、途中、恋人達が訪れるキャバレーのステージを飾るシンガーMona Goya の歌声ではなかろうか。