「水女」キム・ギヨン 東京国際映画祭  ”Water Lady” Kim Ki-young


仕事の合間をぬって、東京国際映画祭に駆けつける。
2日前スコリモフスキの17年ぶりの新作を見逃す(Sold Outだった!大誤算)という失態を演じ、当日券はウェブで買うものだということを漸く理解した体たらく。午前0時に購入したチケットを劇場ToHo Cinemas で発券し、無事にキム・ギヨン作品を見た。
シネスコからかどうなのか、「水女」はとにかく登場人物たちが地面や床を這いつくばる。主人公の傷痍軍人は足を負傷しているから、すぐ倒れてしまうのは理解できるが、吃音の妻や水商売の女までが、室内室外を問わず、寝そべって苦痛に満ちた表情を湛える。いや、これはきっとキム・ギヨンの好みに違いない。どこかわからぬが、韓国の大湿原で二人だけ爆走する夫婦も泥の中を転げ回るし、竹林に隠れる恋敵と対決するときも傷痍軍人は匍匐前進する。水平方向に身体を転がしたいという欲望があるとしか思えない。
青少年育成推奨作品(コトバは全く正確でない)として撮られたこの企画は、最後、吃音だった息子が突然流暢に全国青少年憲章のようなものを唱和する、しかもそれが吃音だった母親を治癒させてしまうというオチで纏め上げられている。企画上、この青年憲章は必須だったのだろうが、山田洋次であれば小学校の教室で生徒が斉唱するような描写になるだろうが、健全な青少年育成とは全く関係ない異形の物語を作り上げ、最後にムリヤリ落とすという、この強引さにはあきれてしまった!すごすぎる。

Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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