オバマが大統領選に勝利した。Bradley effect など、最後の最後で黒人支持を覆し、白人候補に投票してしまう白人支持層が必ずいるはずだという否定的予見を裏切り、アメリカはブッシュ政権に心底辟易したのだと言うことを示す結果となった。もちろんオバマの演説力と政策内容は素晴らしい。中産階級へのTax Cut、国民全員ではないが多くをカバーする公的健康保険、イラク戦争の終結、アフガニスタンの沈静化など現実的な好判断だと頷けるし、今聞いたばかりの”Yes, We Can”スピーチは、「アメリカが世界に誇るのは経済力でも軍人力でもない、希望を信じる力だ」と心をぐっと掴み、高揚させる力はすごい。(自分も泣きそうになった)しかし、一歩引いてアメリカの状況に視線を広く投げかけてみるとオバマ氏の言動をつぶさに注目している層よりも、むしろ全く関心を示さなかった層の現状への不満ーーイラク戦争と経済危機ーーが大きな波となり、投票所に押し寄せたのが大きかったのではないか。
Big River を撮影したアリゾナ(McCain のお膝元)、テキサス等のレッドステーツは、やはり共和党の圧勝だった。自民党とおなじく、地元の利害と密接してい州ではどんなことがあろうとも状況は変わらない。それが2004年Bush-Cheneyの旗をフェニックスの至る所で見た自分が感じた諦念だったが、しかし、40年間共和党支持だったバージニア、フロリダでObama氏が勝利したことを考えると、あり得ない変化が起きてしまうのがアメリカでもあるのだ。そこにあるのは、昔から変わらぬ土地に根ざした信条や宗教的哲学ではない。根底からの合理主義だと思う。イラク戦争と経済危機から生まれた景気減退、失業率UPに嫌気がさせば、赤だろうが青だろうが関係ない。8年間のブッシュ政権とは違う何かを見たいという大きな波の背後には、Whatever works is fine. という、哲学不在の現場合理主義があるのだと思う。それが9.11後のアフガニスタン空爆など、リアクション的な国粋主義に振れてしまうことはあれども、月面着陸、宇宙開発など不可能を可能とする正のエネルギーともなりうる。Barack Hussein Obamaには、それを期待したい。