大映、1971年、92分、シネスコ
<キャスト>
関根恵子(高橋惠子)、大門正明、蟹江敬三、松坂慶子、内田朝雄、杉山とく子、小峯美栄子、根岸明美
<スタッフ>
監督:増村保造/脚本:今子正義、伊藤昌洋/原作:野坂昭如 「心中弁天島」/音楽:渡辺岳夫/撮影:小林節雄
1971年大映が倒産直前に増村が撮り上げた作品。
町場の赤い公衆電話で出会った組立工場で働く16才(関根)の女工とヤクザに目をかけてもらおうと場末で威勢を張ってる18才のチンピラ(大門)。ヤクザに女を献上するためにやったナンパが思わぬ成功を収め、デートを続けるウチに男は女に惚れてしまう。その合間、合間に舞台設定の説明フラッシュバックが挿入されるという凡庸な展開。当然のごとく惚れた男女の逃避行となるのだが、ヤクザの追っ手が全く現れないというのが面白い。
二人はホテルにしけ込む。今見てみるとたいしたことない貧乏くさいホテルがゴージャス!とはしゃぎ回る男女の姿は笑えたが、そんなことはどうでもよく、追っ手不在の逃避行が延々と引きのばされてゆく時間が、映画的に心地よく、美しく展開してゆき、最後まで見せきってしまうあたりが増村の力量なのだろう。
夜を共にした二人は翌朝、なんの脈絡もなく突然草原を歩き、半分水没した小舟に捕まりながら、半裸で川を渡る。なぜ川を渡るのか、理論的説明されることなしに、映画全体の切迫感で、不器用に生き急いでいる二人が正当化され、納得できてしまう。あの舟を押しながら二人はどこへ消えてゆくのか、未来に対する不明瞭さの表象としての川は「アカルイミライ」を想起させる。
BTW その直前、テレビで「さよなら銀河鉄道999 -アンドロメダ終着駅- (劇場映画版)」をなんの気なしに見てしまった。号泣。いや〜まいった。もともとアニメには弱い世代なのだが、このラストはやばい。