1988 France
Isabelle Huppert, François Cluzet, Marie Trintignant
80年代後半からだろうか。シャブロルのカッティングのタイミングがどんどん早くなっていったように感じる。小気味良いというより、見る者の解釈が落ち着く前に次のショットをたたみ掛けるような、呼吸が目立つようになってきた。何を考えているのか全く読めず、全てが唐突に見えるユペールの演技の質にもよるのかもしれないが、近所の女性が全裸で堕胎しているのにも動じず、「そんなんじゃ堕ろせないわよ」と他の方法での堕胎を引き受けたかと思えば、急に声を張り上げて歌い踊り狂う。照明・光の質によってヘーゼル、緑、青、グレーにその瞳の色が変化するのも、唐突感を生み出している。
ドイツ占領下のフランスといっても殆どのシーンがアパートの中であり、外から来る堕胎依頼者の女性、娼婦とマリーの会話から時代性が浮かび上がってくる。一つのアパートと、その前の子どもを遊ばせる中庭さえあれば、第二次世界大戦でも描いてみせるというシャブロルは、人を喰った演出家というより、緻密な職人としての技量を証明している。