1957 大映東京 88分
監督二作目にして、強烈な切れ味。
当時の格差など社会問題を背景に描きつつも、どう見ても日本に見えない色彩美と過剰な演出がただただおもしろい。どうみても狭すぎる部屋でジャズバンドが昼間からサックスを炸裂させていたり、洋館にすむ金持ち家族が庭でテニスではなく、卓球をしながらバヤリースのオレンジを飲み交わしていたり、辻褄は置いといて過剰になることに特化した細部が画面からはみ出てくる。
これだけの物語を88分におさめ、最初と同じロケーション(海際の岩場)で円環を閉じてしまう構築力は、さすが。この後の作品でさらにもっと盛りだくさんになるだろうことを予期させるに十分な、余裕ある構成力といえる。
初めて組んだ若尾文子に、少年が馬乗りになって取っ組み合いの決闘をするというシーンの過激さは、この後、さらにエスカレートした性表現へと発展してゆくことを予告していた。
会場で買えるNFCニューズレターにある万田邦敏の「やりすぎる増村」論考は刺激的で、本質を射抜いている。