「都会のひと部屋」 une Chambre en ville Jacques Demy
「ロシュフォールの恋人達」、「シェルブールの雨傘」など数えるほどしか見ていないジャック・ドゥミだったが、これは傑作!
色彩の作家としてドゥミが本領を発揮している。
説話空間が、すべて原色で切り分けられ、人物も色分けして記憶されてしまうという過剰な明瞭さ。ただごとではない。
各々のキャラクター、部屋ごとに違った色が配され、ミシェル・ピコリなど、ああ、あのミドリの人ね、という映画的記憶となる。そんな映画、果たしてあっただろうか。
冒頭、無言で向かい合うデモ隊と警察の対峙から、歌が突如始まるというあたりの呼吸は痺れる。ハリウッドの50年代ミュージカルのような“助走“はなく、いきなり歌いだす。まさしくオペラのものであり、それを港町ナントのど真ん中を交通封鎖してやりのけるあたりが感動的だ。
1982年の作品だが、設定は1955年ナントであったストライキをベースにしているよう。小さな恋愛話に収まらず、政治と歴史、その時代、その都市の空気を吸い込み、映画に取り入れようとするあたりが、ヌーベルヴァーグの遺伝子と言えるだろう。
(1982年/90分/デジタル・リマスター版/カラー/日本語字幕付)
出演: ドミニク・サンダ(エディット・ルロワイエ)、リシャール・ベリ(フランソワ・ギルボー)、ダニエル・ダリュー(マルゴ・ラングロワ)、ミシェル・ピコリ (エドモン・ルロワイエ)、ジャン=フランソワ・ステヴナン(ダンビエル)、ファビアンヌ・ギヨン(ヴィオレット・ベルティエ)