「息の跡」小森はるか

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映画の画面、ワンショットごとに血を通わせること。
それが巨大震災に映画作家が向き合う唯一の方法であることを、小森はるかは誰に教わることもなく知っていた。荒れ果て、人気(ひとけ)もなくなった荒野が、一人のたね屋のつぶやきで、まるで違った風景に見えてくる。
彼女は、ひとりたね屋の定点観測を続ける。たね屋は、悲しみが深まることを避けるため、母国語でなく英語、中国語、スペイン語でつぶやきを続けてゆく。すると信じ難いことに、言語によらずともはみ出してくる、情感だけがこちらに浄化され伝染してくるのだ。たね屋の魅力を見いだし、キャメラとともに根気強く付き合い続けた彼女の胆力にひたすら感動した。
映画と震災の美しく、正しい接点に触れた気分である。

Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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