FILMeX最終日にいそいそとキアロスタミの遺作を拝見。
真の傑作。今年みた中でナンバーワンかもしれない。
映画と詩の関係が、「マルメロの陽光」を思い出させた。
映画とは、画面の「枠=フレーム」という四角い物理的制約のなかで起きる限られた表象現象である、ということにくわえ、
時間にも一つの塊の枠組みを与えるという意味で、時間軸方向のFRAMEを与えるのも、映画であるということをまざまざと感じさせる作品だった。
本作は、24の1シーン1ショットのFRAME を提示する。
殆ど静止画のような止まった時間を見つめながら、その合間合間に見てゆく時間の流れを見る者が想像力によって埋めていく作業。そこに映画が生まれてゆく。個人的には、FRAME6,21,24がもっとも美しく、この映画の本質を突くショットであるように思えた。どれも室内から外への視線、鳥、木、音楽、が共通している。
一回見た限りだが、記憶の限り描写してみる。
FRAME 1 一幅の絵画。猟師が猟犬を連れ、雪原の下に望む町に向かっている。静止画かと思っていると、家から煙が立ち上り、犬が歩き出し、鳥が飛び出し、奥の道路で牛が歩き出す。徐々に動画になってゆく。
FRAME 2 走行する車窓。自動でウィーンとあく。
そこでは雪の中、馬二頭が争っている。
FRAME3 海岸に横たわる全く動かない白黒の物体。
よく見ると呼吸して揺れている牛だった。
そこへ牛の群れが通りかかる。
FRAME4 雪原をトナカイが横切ってゆく。
FRAME5 雪原、子鹿が茂みの真ん中にじっとしている。
動き出したとき、バンと打たれた?もしくは罠にかかって、 倒れる。
FRAME6 白黒。室内の窓。からすが窓際に止まっており、外には美しい木の影。女性ボーカルの音楽が室内に鳴り響く。
FRAME7 海際の遊歩道の手すり。からすが二匹〜3匹止まっている。
FRAME8 雪原(海の際?)、大量の小鳥が群れをなして狂ったように飛んでゆく。
FRAME9 岩の丸い穴の向こうにライオンが二頭。どしゃぶりの雨。
FRAME10 豪雪の中、羊が丸くなり集まっている。犬が一匹。
FRAME11 豪雪の中、オオカミ同士がじゃれ合っている。
FRAME12 温かい色彩。障子があり向こうに芝生。障子の影に鳩。
何匹もの漁類が横切ってゆく。
FRAME13 海。カモメが何匹も居て、そのうちばーん!と一匹が撃ち落とされる。 そこに仲間のカモメがどんどん寄ってくる。
FRAME14 町の近く。コンクリートの四角い枠組みの奥に道路が見える。 そこをバイクや自動車が通り過ぎ、その度に小鳥が測道へ逃げる。
FRAME15 パリのエッフェル塔。シリア人難民?5人の後ろ姿。
段々日が暮れ、明かりが付く。ギターを持って歌う女性がくる。
FRAME16 海岸線の廃墟。奥にボートが止めてある。ガチョウが出入りする。
FRAME17 雪原。木の間に雀がいる。ネコがやってきて捕まえ、くわえて持ってゆく。
FRAME18 雪原。ムクドリが足をいろいろ動かし、隣の仲間と共に遊ぶ。
FRAME19 雪原の牛。中央に一匹が鎮座し、その奥や手前を群れが横切って行く。 白黒の中、吹雪、霧が美しいトーン。
FRAME20 窓の外を通した、外は明るく静かな雪原。
FRAME21 部屋の中。室内。枠外で人が入ってきて、カーテンを自動で空け、音楽がなる。音響空間がいい。外に木が揺れ、からすが窓際に止まる。美しい。
FRAME22 雪原にいる鳥? とりとめもなく動いている。
FRAME23 木こりが通んだ木材。その奥に二本、木が見える。順番に切り倒される。木材の上にインコのような発色の良い鳥。
FRAME24 室内。窓際の机にコンピューターがあり、映像編集がされている。モノクロームのハリウッド映画(題名不明、知りたい!)のラブシーン。男女が抱き合い、女が腕を男の首に廻す瞬間が、スローモーションで再生されている。おそらくレンダリングの最中なのだろう。1フレーム1フレームを、刻み込むように示すモニター。窓の外では雪が降り、木々が揺れ、夜は更けてゆく。
2017年12月12日
ヒッチコック監督の映画です。疑惑の影。
流れる歌も、沁みますね。
2018年11月12日
しばらく返信できずすみません。そうですね、「疑惑の影」でした! ありがとうございます。