The Favourite 女王陛下のお気に入り

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The Favourite    女王陛下のお気に入り  2019

Yorgos Lantimos ヨルゴス・ランティモスによる傑作。

対仏戦争中のイングランドの宮廷劇も、演出がキレキレであれば、こうも現代的で深みのあるドラマを作り上げられるのか。

いわゆる「大奥」のような設定で、女王さまの寵愛を受けようと、周りが寄ってたかって群がるという設定は、どの国、どの時代の「宮廷もの」にもありうるが、たいていの場合、演出家は「周り」をやたら豪華絢爛、多種多様にはったりを利かせ、大風呂敷を広げることに腐心する。

しかし、今作では、寵愛を争うのは2人の女性のみ。女王を含めた三角関係に落とし込むため、人間ドラマとしても深みに到達している。結局、ラスト片方がこの寵愛奪取バトルに勝利するのだが、その勝負の結果以上に映画の余韻がじんわりと残るのは、プライドが高いようで内面は脆く、高圧的のようで頭の弱い愚かさも併せ持つ、女王その人の孤独な存在を深く描き込めているからに違いない。

ビチャッ、グシャッ、ゲロッなど効果音が炸裂する演出の多いランティモス。思わず吹き出してしまうが、どこか寂しげで噛み応えのある描写がなんとも魅力的だ。さらりと下品な下ネタを呟く公爵夫人たちの佇まいが最高である。

ちなみにアメリカ版のこの予告編はとてもよく出来ている。
本編のうま味をうまく凝縮しつつ、核心にはふれず、サラッと通り過ぎる。じつに美しい。

https://www.imdb.com/title/tt5083738/videoplayer/vi687061529?ref_=tt_ov_vi

Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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