The Favourite 女王陛下のお気に入り 2019
Yorgos Lantimos ヨルゴス・ランティモスによる傑作。
対仏戦争中のイングランドの宮廷劇も、演出がキレキレであれば、こうも現代的で深みのあるドラマを作り上げられるのか。
いわゆる「大奥」のような設定で、女王さまの寵愛を受けようと、周りが寄ってたかって群がるという設定は、どの国、どの時代の「宮廷もの」にもありうるが、たいていの場合、演出家は「周り」をやたら豪華絢爛、多種多様にはったりを利かせ、大風呂敷を広げることに腐心する。
しかし、今作では、寵愛を争うのは2人の女性のみ。女王を含めた三角関係に落とし込むため、人間ドラマとしても深みに到達している。結局、ラスト片方がこの寵愛奪取バトルに勝利するのだが、その勝負の結果以上に映画の余韻がじんわりと残るのは、プライドが高いようで内面は脆く、高圧的のようで頭の弱い愚かさも併せ持つ、女王その人の孤独な存在を深く描き込めているからに違いない。
ビチャッ、グシャッ、ゲロッなど効果音が炸裂する演出の多いランティモス。思わず吹き出してしまうが、どこか寂しげで噛み応えのある描写がなんとも魅力的だ。さらりと下品な下ネタを呟く公爵夫人たちの佇まいが最高である。
ちなみにアメリカ版のこの予告編はとてもよく出来ている。
本編のうま味をうまく凝縮しつつ、核心にはふれず、サラッと通り過ぎる。じつに美しい。
https://www.imdb.com/title/tt5083738/videoplayer/vi687061529?ref_=tt_ov_vi