“Denise Ho Becoming the Song” Dir. Sue Williams
「デニス・ホー・ビカミング・ザ・ソング」 スー・ウィリアムズ監督 (試写にて)
アーティストは生きてゆくうえで、Humanity (人間性)の側につくか否か、という選択に迫られる局面がある。言葉ではたやすく聞こえるが、利益相反となる場合や、国家から強靭な抑圧を受ける場合、しかたなく芸道を曲げてしまう人間は多いだろう。
Denise Ho は、あくまでHumanity (人間性)を選び、彼女の歌が唱える自由と民主主義を現実に訴えるデモに参加し、生き様を首尾一貫させてきた。
それが、同時代の香港人の生き様とまさにシンクロしている、ということを発見させてくれるというのが本作。時代と個人の人生が一挙に見えてくる様に深く感動した。
Denise は正しいからこそどんどん美しくなってゆく。
中国からの圧力が日に日に増す中、香港の人々が口にしたくてもできない言葉を、敢えて謳うDenise。人々の心の声と彼女の声がシンクロしてゆくとき、両者の顔がとてつもなく美しく見える。
かつてゴダールが、ロッセリーニの映画を「正しいから美しい」と評したのを思い出した。