“Denise Ho Becoming the Song”

“Denise Ho Becoming the Song”   Dir. Sue Williams
「デニス・ホー・ビカミング・ザ・ソング」  スー・ウィリアムズ監督  (試写にて)
アーティストは生きてゆくうえで、Humanity (人間性)の側につくか否か、という選択に迫られる局面がある。言葉ではたやすく聞こえるが、利益相反となる場合や、国家から強靭な抑圧を受ける場合、しかたなく芸道を曲げてしまう人間は多いだろう。
Denise Ho は、あくまでHumanity (人間性)を選び、彼女の歌が唱える自由と民主主義を現実に訴えるデモに参加し、生き様を首尾一貫させてきた。
それが、同時代の香港人の生き様とまさにシンクロしている、ということを発見させてくれるというのが本作。時代と個人の人生が一挙に見えてくる様に深く感動した。
Denise は正しいからこそどんどん美しくなってゆく。
中国からの圧力が日に日に増す中、香港の人々が口にしたくてもできない言葉を、敢えて謳うDenise。人々の心の声と彼女の声がシンクロしてゆくとき、両者の顔がとてつもなく美しく見える。
かつてゴダールが、ロッセリーニの映画を「正しいから美しい」と評したのを思い出した。
Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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