誰もが映画を見られる場所のために           〜国立映画アーカイブ クラファンの意味〜

国立映画アーカイブ(NFA, National Film Archive)が6月25日より、クラウドファンディングを開始。第一目標は1億円。  

これは単なるクラファンではないです。

文化の危機的状況への叫びです。

専用サイトには「活動の安定的な継続と将来への発展に向け」と理由がありますが、そこでは背景の全ては説明されていません。ストレートな国政批判になるからです。

なので、僕ら映画人や報道が言葉を尽くして、何が起きているか話す必要があります。

まず安倍・菅政権から続く「文化を産業化して稼げ」という政府全体の成長戦略が、脈々とありました。

去年11月財務省の財政審が「国立博物館・美術館は公費(税金)への依存度が高く、入場料収入が不十分である」と厳しく指摘。文化庁は当初、文化財の保護や研究の観点から抵抗しましたが、財務省からの予算削減圧力を前に妥協せざるを得ず、今年2月末「2030年度までに展示事業費の65%以上を入場料などの自己収入でまかなう」というノルマを中期目標に書き込むことになりました。

国立博物館や美術館に、収入目標が課されたのです。

29年度に40%を下回る場合、「社会的に求められている役割を十分に果たせていない」と判断され、再編の対象となるそうです。(一部報道は閉館とまで言いましたが、文化庁は否定)

この公費依存度を引き下げる方針に従い、予算も削減。
NFAJの2026年度の運営費交付金は3億5856万円。
25年度の6億3665万円、24年度の6億8291万円から大幅に減らされました。
フランス(約38億円)や韓国(約15億円)など海外の同種施設と比べて元々規模が小さかった予算がさらに半減する危機的状況に陥りました。

文化庁は6/26に声明を出し、独立法人国立美術館への予算は増額しており、その下部機関である国立映画アーカイブへの予算を減額したのは、「運営費交付金と自己収入のバランスを全館の間で是正した結果」で、国立美術館の判断である。つまり、文化庁はせいではない、という声明を発表。 
(→ https://www.bunka.go.jp/bunkacho/shokan_hojin/94400501.html )

ここで僕たちが問わなければいけないのは、予算を減らした責任の所在ではありません。

稼がないと「社会的に求められている役割を十分に果たせていない」という価値観です。

本当にそうでしょうか? 

この違和感を大切にしたいです。

国立の文化機関の貢献度をはかる指標は、収益でよいのでしょうか?

文化機関の貢献度をはかる指標として、金銭的な収益ではなく、
どれだけ人を動員したのか。どれだけの学校、図書館、地域施設でプログラムが上映されたのか。
など、文化の面的な展開を図る指標があるはずです。 

文化庁には、自己保身的な声明を出すより、いま世間の注目を集めているタイミングで、財務省そして国民に向けて、この本質的な問題を突きつける胆力を示してほしいです。

NFAJは、映画の公益的価値を支える機関です。
平たくいうと、老若男女、貧富、階層を問わず、「誰でも映画の文化遺産に触れられる」ことを目指しています。

NFAJ(かつて僕らはフィルムセンターと呼んだ)には、9万本以上のフィルムや貴重な映画関連資料があり、定期的行われる様々な特集上映が一本520円、学生、障がいのある方は無料で見られます。(一部の特集は1300円、学生、障がいのある方は500〜800円。それでも安い!)

学生時代ここに足繁く通い、小津、成瀬、増村保造、ルノワール、中川信夫、川島雄三などの作品にどっぷり浸りきりました。文字通り、僕の映画的記憶・リソースの多くがここで勉強させていただいたもの。映画文化先進国には、必ずこのように「入り浸れる」映画アーカイブがあります。ニューヨークには、MoMA、Anthology Film Archive, Lincoln Center があり、学生証があれば無料もしくは大幅割引。このような場所は、映画ファン、映画人が生まれるゆりかごといえます。

脈々と続く映画文化の歴史に激安で触れることができる場所が、どれだけ大事なことか。

お金のない学生時代、500円玉ひとつで映画を見て心が豊かになったことが何度とあります。

同時に、過去の貴重なフィルムを発掘・修復・保存し、映画文化がさらに豊かになるような発展努力も継続しています。我が国が誇ることのできる映画の殿堂とは、マジでここだと思います。

だれでも格安で見られることで広がってきた映画文化の裾野が、いま蹂躙されようとしています。

映画だけではありません。国立美術館・博物館の文化的貢献度を、経済的指標で図る愚に対し、僕たちは異を唱えていかなければいけないと思います。

誰でも文化を享受できること=文化のアクセシビリティは、脈々とつづくこの国の歴史的、文化的な豊かさです。それを守るための働きかけを、僕たちは続けてゆくべきだと思います。

<さいごに>
「文化も稼ぐべき」という政府方針により追い詰められているこの<映画の殿堂>を、まずはクラファンで救いましょう。

その次、もしくは同時的に「文化を産業化して稼げ」という政府方針の根源的間違いに声を上げてゆく、その応援・拡散をお願いいたします。

クラファンのサイト (寄付には、寄附金控除(所得控除)が適用されます)
https://readyfor.jp/projects/NFAJ2026

「文化を産業化して稼げ」という現在の国の傾向・背景について
https://mainichi.jp/articles/20260419/k00/00m/200/112000c
https://www.yomiuri.co.jp/national/20260304-GYT1T00003/

文化庁の声明
https://www.bunka.go.jp/bunkacho/shokan_hojin/94340601.html

Atsushi Funahashi 東京、谷中に住む映画作家。「道頓堀よ、泣かせてくれ! Documentary of NMB48(公開中)」「桜並木の満開の下に」「フタバから遠く離れて」「谷中暮色」「ビッグ・リバー 」(2006、主演オダギリジョー)「echoes」(2001)を監督。2007年9月に10年住んだニューヨークから、日本へ帰国。本人も解らずのまま、谷根千と呼ばれる下町に惚れ込み、住むようになった。

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