PRODUCTION NOTE
本来は学生俳優たちの卒業制作だった。
撮影中、失われた五重塔のフィルムが発見され急展開!
本作品は、映画・演劇の専門学校ENBUゼミナール(以下、ENBU)の映像俳優コースの卒業制作として企画された作品だった。10代~20代前半の生徒のほとんどが演技経験ゼロ。彼らを3ヶ月間教えた後、講師・舩橋淳が考えたのは、シナリオなしで若者たちを谷中というある種異次元ともいえる街中に放り込み、伝統工芸の職人とぶつかり合わせ、ドキュメンタリーとフィクションを融合させるという従来のENBU作品の枠を大きくはみだす手法だった。
谷中五重塔の8mmフィルムがどこかに存在すると聞いた舩橋は、ドキュメンタリーの取材を続けながら、フィルムの在処を探った。すると、撮影期間中になんと谷中のある寺院でそのフィルムを発見したのであった。フィルムの持ち主は、明王院・現副住職塩田隆明の父上・故塩田隆雄さん。当時、消防団の副団長だった塩田さんは当時は珍しかったコダックエクタクロームのカラー8mmで、五重塔の大火事を消火活動の合間に撮影していたのだ。思わぬ急展開を見せた地元取材は、五重塔炎上の謎に焦点が絞られ、2時間を超える長編映画に発展したのだ。